会社事業概況書の記載に係る留意事項について③

平成30年4月1日以降終了事業年度分から適用される新しい様式の会社事業概況書には、別途企業が作成する可能性のある移転価格文書等に関連した情報が含まれているため整合性等の面で注意が必要です。
今回は、前回の記事「会社事業概況書の記載に係る留意事項について②」の続きです。今回は特に移転価格税制や移転価格文書(LFやMF)との関連が最も深そう注意を要すると思われる項目がかなり多くなっていますので、主だったものから順次詳しく見ていきたいと思います。
【連結子法人】
各連結子会社について、連結グループ内での位置づけ等の概要を記載する項目では、当該子会社の設立経緯やその時期に関する情報が要求されており事業の正当性や実態性(Economic Substance)に関する裏付けとなる項目になります。さらに、連結グループ内における法人の事業上の位置づけ・役割等に関する情報についても記載が求められており、おそらく移転価格文書上だけ情報や分析アプローチが歪められていないかの確認や、MFやLFにおけるグループの移転価格ポリシーに関する記載内容との整合性をチェックする用途にも用いられるものと考えられます。
また、連携子会社へのグループ会社からの出向者があれば、その情報の記載も求められています。移転価格税制の適用範囲の判定において、従来は入手可能な情報の限界もあり、税務当局は資本比率という形式的要件に依拠した実務執行に偏っていましたが、今回の書式改正による当該記載項目の出現により、グループ内の実質的支配関係に基づく移転価格税制適用範囲の判定に道筋を開くことになります。
連結子会社における「連結親法人との取引状況」についても、売上高・仕入高・科目および金額内訳を記載することになります。別表17-4が求める情報レベル(合算値)よりももう一段踏み込んだ内容(取引の方向性および金額の内訳)になります。さらに、「他の連結子法人との取引状況」において、その取引相手となる連結子会社名・売上高・仕入高・科目および金額内訳を記載することになりますので、いわゆる外外取引(Out-Out Transaction)に関しても、各連結子法人毎に網羅的な情報提供をしていくことになります。
連結子会社が第三者取引と行う取引金額を記載することになりますので、裏返すとその連結子会社が関連者間取引を行っている取引割合が計算できることになっています。従って、税務当局としては、移転価格税制対象となる国外関連取引の規模や範囲を特定づける情報として有用な項目であり、ローカルファイルで記載が求められる切り出し損益との整合性チェックにも用いられる可能性があります。
(平成30年度会社事業概況書の記載要領)
(1) 法人が法第2条第12号の7に規定する連結子法人(以下「連結子法人」といいます。)である場合に記載してください。
(2) 「① 連結グループ内での位置づけ等の概要」欄には、以下の内容を記載してください。
イ 法人が連結グループに加入するに至った経緯、目的及び加入年月日
ロ 連結グループ内における法人の事業上の位置づけ・役割等
(3) 「② 主要役員の出向受入の状況」欄は、【総括表】の「⑧ 主要役員の状況」欄に記載した役員が他の法人からの出向者である場合に、当該役員の氏名及び出向元法人名を記載してください。
(4) 「③ 他の連結法人からの管理等の状況」の各欄は、親法人(法人に直接・間接に出資している法人)又は連結グループ内の他の法人(例えば、出資関係がない兄弟会社)(以下「親法人等」といいます。)からの管理(指揮・命令等)状況について、次により記載してください。
イ 「管理部署等」欄は、親法人等の法人名及び管理部署を記載してください。
ロ 「被管理部署」欄は、親法人等の管理部署ごとに法人の管理されている部署を記載してください。
ハ 「主な管理内容」欄には親法人等へ報告等している内容等を記載してください。
(5) 「④連結親法人との取引状況」欄は、掲記の各項目について、法第2条第12号の6の7に規定する連結親法人との当期の取引金額を記載してください。
(6) 「⑤ 他の連結子法人との取引状況」欄は、掲記の各項目について、他の連結子法人との当期の取引金額を記載してください。
(7) 「⑥連結グループ法人以外の法人との取引状況」欄は、連結親法人及び他の連結子法人以外の法人に対する売上高及び仕入高それぞれについて、取引金額が多い順に記載してください。
【その他の留意事項】
注意点として、 「会社事業概況書」は、①総括表、②子会社の状況、③コンピューター処理の概要、④海外取引等の概要、⑤外国法人、⑥連結子法人で1セットになっています(完全支配関係がある他の法人を有する場合は、出資関係図の提出も必要)。
連結子法人である場合に、「会社事業概況書(連結子法人)」のみ、又は外国法人である場合に、「会社事業概況書(外国法人)」のみ提出して、「会社事業概況書(総括表)」やその他の「会社事業概況書」を提出されていないケースがあるということで国税庁からも注意喚起されています。
最後に、最新の「会社事業概況書」の書式や記載要領の掲載場所について記載しておきます。
国税庁ホームページ(https://www.nta.go.jp)のトップページから、「税の情報・手続・用紙」にポインターを合わせ、≪申告手続・用紙/申告・申請・届出等、用紙(手続の案内・様式)/確定申告
等情報/法人税/法人税及び地方法人税の申告(法人税申告書別表等)≫の順にアクセスし、「(16)会社事業概況書(調査課所管法人用)」をクリックするとダウンロードすることが出来ます。
以上、平成30年度4月1日以降に適用する「会社事業概況書」のうち移転価格対応と密接に関わりそうな内容について俯瞰してきました。直前期になって、慌てて準備して移転価格リスクのトリガーとならないよう、余裕を持った事前の情報収集と十分な検討時間を取って整合性の確保に努めて頂ければ幸いです。
(2024年12月8日 最終更新)
(2018年5月22日 新着情報)