移転価格分析向け二大企業データベース徹底比較(Orbis vs. Onesource)「販社編」①

目次

ベンチマーク分析/2大企業データベースを徹底比較「販社(Limited Risk Distributors)編」①

Orbis vs Onesource

 

移転価格文書等の経済分析の世界で、よく使用されている企業データベースと言えばOECDのレポートにも名前が記載されているビューロバンダイクのOrbis/OsirisとトムソンロイターのOnesourceが挙げられます。企業が移転価格ポリシーとしてTNMMを用いている場合などによく使用されている商業用データベースです。今回は、両者の性能・機能や経済分析結果に違いがあるか、コストパフォーマンス等に関して比較検討してみたいと思います。

 

【比較方法】

一般的な移転価格文書をサンプルとして入手し、典型的な比較対象企業スクリーニングのパターンを持つベンチマーク分析を最新版の両企業データベース上で再現し、抽出される企業数や企業名等が同様か?あるいは差異があるか?等について検証します。

 

【検証対象とする企業のプロファイル】

検証対象企業は、今回アジアパシフィック(APAC)地域における「機能リスクの比較的限定的な販売会社(Limited Risk Distributor)」を想定します。

 

【具体的なスクリーニング条件】

上記の比較対象企業と比較可能性のある企業を選定するためのスクリーニング条件(企業情報による定性レビュー前段階まで)は、下表のとおりとします。

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Orbis & Onesource CommonOrbis Prime SICOnesource Prime SIC
ARATA CORPORATION51225199
CB GROUP MANAGEMENT CO., LTD.51225199
CREATE CORPORATION50745074
DAISUI CO LTD51465146
DOSHISHA CO LTD50995064
HARIMA-KYOWA CO., LTD.51225199
HASHIMOTO SOGYO HOLDINGS CO., LTD.50745051
KAMEI CORPORATION51725172
KANADEN CORPORATION50845065
KFC, LTD.50725039
KOBAYASHI METALS LIMITED50725072
MITANI SANGYO CO., LTD.51695169
NAITO & CO., LTD.50845084
NAKAYAMAFUKU CO., LTD.50645023
NIHON DENKEI CO LTD50495084
NIPPON STEEL & SUMIKIN BUSSAN CORP.50515051
ONOKEN CO LTD50515051
OTEC CORPORATION50745074
SAKAE ELECTRONICS CORPORATION50655065
SANGETSU CORPORATION50395023
SANSHIN ELECTRONICS CO., LTD.50655065
SATO SHO-JI CORPORATION50515051
SEIWA CHUO HOLDINGS CORPORATION50515051
SHINSHO CORPORATION50515051
SHIP HEALTHCARE HOLDINGS, INC.50475047
SPK CORPORATION50135013
TACHIBANA ELETECH CO LTD50655084
TAIYO BUSSAN KAISHA LTD51545153
TAKACHIHO KOHEKI CO LTD50655065
TECHNO ASSOCIE CO., LTD.50725072
TOKAI ELECTRONICS CO., LTD.50655065
TOMITA CO LTD50845084
TOSHIN GROUP CO., LTD.50635063
WAKITA & CO LTD50825082
YAGI & CO., LTD.51315131
YUASA FUNASHOKU CO LTD51415141
ZAOH COMPANY LIMITED50845084

 

実際上記の表内のステップとプロセスを経て選択された企業は、Orbisが408社でOnesourceが334社と言う結果になり、その差は74社と分かりましたが、この表面的な差を単純に両者の性能や収録企業数の差異として捉えられると判断を誤ることになりそうです。そこで、その選定された候補企業会社数の数字の差異がどこから発生するのか深堀りするために、国別に集計してみるとその結果は非常に興味深い結果となりました。

 

【国別候補企業数】

1. COSMO BIO COMPANY, LIMITED
2.DVxInc.
3.FUJICORPORATION
4.JUTECHoldingsCorp
5.MediusHoldingsCoLtd
6. Nice Holdings, Inc.
7.RenesasEastonCoLtd
8.StartiaHoldingsInc
9.TOMENDEVICESCORPORATION

OrbisとOnesourceとのスクリーニング結果の差異である74社は、上表を見るとその大半が中国とインドにおける候補企業数の差異から来るものであることが分かります。中国の候補企業数はOrbisが127社であるのに対して、Onesourceは45社に留まっています。またインドについては、Orbisが78社であるのに対して、Onesourceは20社となっており、この2か国だけで、両データベースの候補企業結果の差異は140社に上ります。ところが、よく考えてみると中国・インドを除けば、アジアパシフィック地域ではOnesouceの方が66社(=140社-74社)多くの候補企業をユーザーに提示していることになります。

 

そもそも、インドにおいては、現地の税務当局がインド国内企業に特化したローカル企業データベース(CapitalineやProwess等)の使用を強く推奨しているため、実務的には今回検証に用いている2つのデータベースはいずれも使用できる場面が限定的になるものと思われます。ただし、Onesourceには、オプションとしてCapitalineのデータベース情報を検索母集団に追加することが出来ますので、より信頼性のあるインド国内企業の情報を入手することが出来る仕組みになっています。

 

さらに、日本国内における候補企業数でみていくと、Orbisが83社であるのに対して、Onesourceは92社にのぼり、定性スクリーニング前の母集団でいうとOnesourceの方が広く候補企業を検索出来ていることになります。このように、Onesourceの方が5社以上多くの候補企業を捉えているアジアパシフィックの国は、香港・韓国・台湾・タイ・ベトナムと5か国に上ります

 

検索条件は考えられ得る限り同等にしているにも関わらず、これほどの候補企業の検索結果に差異が出てくることは本来であればないのですが、であるとするならば、この差異はもともと収録されている企業データのコンテンツや質にも大きく影響を受けているのではないかとの仮説が浮かび上がってきます。

 

この仮説を検証するために、両データベースから検索された日本国内に所在する企業について、個別情報を比較して見ていくことにしましょう。

 

まず、Orbisで検索された日本国内の候補企業83社のリストをご覧ください。

1桁から異なっていた企業
1. COSMO BIO COMPANY, LIMITED
2.DVxInc.
3.FUJICORPORATION
4.JUTECHoldingsCorp
5.MediusHoldingsCoLtd
6. Nice Holdings, Inc.
7.RenesasEastonCoLtd
8.StartiaHoldingsInc
9.TOMENDEVICESCORPORATION

 

次に、Onesourceで検索された日本国内の候補企業92社のリストをご覧ください。

選定(スクリーニング)条件OrbisOneSourceNotes
Publication 2018/05 版2018/05 版
Reported as active and listed; (上場企業かつ Active (活動中)である企業)69370 (Listed=71,184)Listed: Over 70,000OneSource: 最初から Active 企業のため N/A
US SIC コードが 50 または 51 から始まる企業37252927*US SIC: Industry Group 50: Wholesale Trade - Durable Goods Industry Group 51: Wholesale Trade - Non-Durable Goods

両データベースの候補企業リストを比較すると、まず気づくことはこれだけの候補企業が検索されているなか、共通の候補企業があまりないということです。Orbis83社、Onesource92社のうち両者共通の候補企業は下記の37社のみと考えられます(この会社は共通じゃないよとのお気づきがありましたら是非ご指摘の旨お知らせください)。

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その37社を並べてみるとあることに気が付きませんか?

 

そう、OrbisとOnesourceではSIC Primary Codeが異なる場合があるのです。例えばARATA CORPORATIONでいえば、OrbisのSIC Primary Codeが5122(Drugs, drug proprietaries, and druggists’ sundries wholesale dealing in)であるのに対して、Onesourceは5199(Whol: Nondurable Goods, nec)となっています。

 

ARATA CORPORATIONの事業概要で確認してみましょう。Orbisでは「This company is engaged in the wholesale of cosmetics, daily used products, household products and pet products. It was incorporated in 2002. The company is headquartered in Chiba, Japan. It offers cosmetics, soaps, bath salts and oral health products, detergents, fragrance, repellents, pesticides and batteries, recording media, lighting goods, office automation products, writing materials, foodstuff and automobile use products, family use paper products, baby products, sanitary goods, hygiene products, kitchen sundries, household groceries, leisure goods, garden supplies, and pet goods.」

 

Onesourceでは、「ARATA CORPORATION is a Japan-based company principally engaged in the wholesale of cosmetics, daily used products, household products and pet products. Its health & beauty products include cosmetics, soaps, bath salts and oral health products. It provides toiletry products, including detergents, fragrance, repellents, pesticides and batteries, recording media, lighting goods, office automation products, writing materials, foodstuff and automobile use products, among others. Its paper products include family use paper products, baby products, sanitary goods, hygiene products and others. Its household products include kitchen sundries, household groceries, leisure goods, garden supplies and others. The Company also provides pet goods. The Company has nine subsidiaries and one associated companies.」

 

となっていますね。では、答え合わせのためにArata Corporationの企業HPを確認してみます。http://www.arata-gr.jp

 

確かに、ドラッグストアのようなワンストップショッピングが可能な店舗をターゲットとして、あらゆる日用品や生活雑貨を取り扱っている卸商社と言えそうです。しかし、主要商品を見ても医薬品そのものは取り扱ってなさそうですので、Orbisがカテゴリーしている5122という医薬品卸売業が代表されるSICカテゴリーは一部正しい面もあるのですが、解釈がアグレッシブに行き過ぎている面があります。筆者自身の経験上も、Orbisを使う場合はSICを鵜呑みにしたり、データベース内の事業概要だけで判断してしまうと、大きな誤解を招く恐れがあり、本当に適切な比較対象企業を選定するのは十分かつ綿密な事実確認と検討が必要になります。

一方、Onesouceがカテゴリーしている5199は「Non Durable Goods」ということで、確かにこの会社が扱っている製品群が多岐に渡っている点を捉えれば間違ってはいないのですが、あまりにも的が広いSICコードを使用しているため、具体的な製品や業界の方向性のイメージすら得られないことになります。その意味では、Onesourceに関しても、SICを参照に判断するだけでは不十分であり、企業概要やその他のソースから得られる情報の基づいて更なる検討が必要不可欠となります。

 

(候補企業のSICカテゴリー判定に関する両データベースの比較結果)

Orbis: アグレッシブで特徴をつかみやすい。主観的すぎて判断を誤ることも。

Onesource: コンサバティブで客観的。誤解の少ない分類だが慎重すぎる場合も。

 

移転価格専門家や税理士法人の間では、ベンチマーク分析のスクリーニングにおいて、SICを限定的に設定して絞り込むのは良くないと言われています。上記のSIC判定の検証事例から見ても、こうした内部のインストラクションは、分析の信頼性を担保するためにも納得できるものです。しかし、現実的にはベンチマーク分析作業者の想いや手間暇という観点からすれば、比較対象となる候補企業の定性情報を具体的に検討する数はできるだけ少ないほうが良いわけで、繁忙状態になると、つい極力手っ取り早い方法で候補企業数を絞り込もうとしてしまいます。それもそのはずで、例えば比較対象候補企業が100社あったとして、そのすべての候補企業の有価証券報告書だけでもプリンターで印刷してみてください。それだけでも作業者のデスク上には漫画でみるかのような印刷物の山が出来上がるのです。それゆえに、作業者は、候補企業数が多くなりそうな雰囲気が分かると、スクリーニング作業の初期段階で4桁のSICコードによる絞り込み条件を設定しがちになります。その結果、本来比較対象企業に残るべき企業が除外されてしまっていたり、本来であれば類似性と言う点で首をかしげるような事業に従事する企業が比較対象企業として選定されてしまっている事例が見受けられることになります。実際にこのような例は大手会計事務所系で作成された移転価格文書内にでもよく見られるやり方です。もちろん移転価格の比較対象企業というのは、SICや事業概要だけで判断するものではないので一概には言えませんし、契約金額が低すぎてこうしたところで十分な工数が掛けられなかったとの事情もあったのかも知れません。表面的に移転価格文書化対応をするだけならこのレベルでも良いのかもしれませんが、しかし、税務調査において分析内容を精査されると、ディフェンス力が十分でない分調査官からの指摘を受けやすくなり、結果修正や更正等に至る可能性も高くなることは言うまでもないところです。

 

大量の企業の事業概要等の定性情報から類似度を判定する作業に関しては、人の手に委ねるとどうしても手間暇や作業時間(予算)が不効率で、分析自体の信頼性も作業者の集中力や知識レベルに大きく左右されてしまうため、ITやAIを活用した分析ツールの使用がおすすめです最新の確立されたAI技術を応用した分析ツールであれば、人の主観や作業環境に大きな影響を受けることなく、フェアで客観的な分析判断を粛々と行うことが出来るため、大幅な効率化が望めるという特質すべき強みがあります。株式会社iTPSのホームページ上からオーダーできる「コンプセレクター」と言う移転価格分析専用のサービスツールがこれに該当し、現在利用可能になっている唯一のツールです。

 

さて、SIC判定に関する両データベースの比較記事、いかがだったでしょうか?実は、このテーマさらに深堀りすると非常に面白いということが判明しています。この記事内で共通で選定された会社が37社あると紹介しましたが、ではその37社以外の会社は、なぜいずれかの企業データベース上で選ばれたり選ばれなかったりしたのか? そのあたりを次回の記事では述べていこうと思います。この辺りを紐解くと、移転価格において企業データベースを使用する場合に、どのような点が補正すべきポイントとして挙げられるべきか?も理解できるはずです。

 

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この記事を書いた人

株式会社iTPSは、移転価格対応に特化した専門サービスを提供する会社です。翻訳、文書作成、比較対象企業選定、コンサルティングまで、豊富な知識と経験で企業の課題を解決します。国際取引における安心と信頼を支えるパートナーとして、企業の成長を力強くサポートします。

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