移転価格分析向け二大企業データベース徹底比較(Orbis vs. Onesource)「販社編」②

ベンチマーク分析/2大企業データベースを徹底比較: 「販社(Limited Risk Distributors)編」②
Orbis vs Onesource
前回の記事「ベンチマーク分析/2大企業データベースを徹底比較: 「販社(Limited Risk Distributors)編」①」の中で、OrbisとOnesource共通で選定された比較対象候補会社が37社あると紹介しましたが、ではその37社以外の会社は、なぜいずれかの企業データベース上で選ばれたり選ばれなかったりしたのか?
移転価格分析に用いる上場企業レベルの情報になると、いずれかのデータベースにしか掲載されていない企業というのはほとんど見受けられません。今回の事例では、ほぼ全ての候補企業が両データベースに何らかの形で掲載されているという事が確認できます(下記図表参照)。
なお、Orbisに含まれるがOnesourceには掲載されていない企業が1社、Onesourceには含まれるがOrbisには掲載されていない企業が1社、それぞれ存在していました。理由はいずれも上場予定または直後の会社であったようです。
本記事の検証内容に関する情報ソースですが、有価証券報告書については2017年度(平成29年度)分の内容に基づいて検証しています。企業ホームページについては、2018年7月1日時点の情報に基づいています。
37社以外の会社とは、同様のスクリーニング条件を適用した結果OrbisかOnesourceかのいずれか一方でしか検索されなかった企業ということになります。
まずは、Orbisでは検索されたもののOnesourceでは検索されなかった企業のうち、US SICコードの上1桁から異なる企業が21社ありました。(検索条件はUS SICコード(4桁)が50、51から始める企業としているため、下2桁が異なるものは今回の精査対象から割愛しました。)これらの産業分類コードが著しく異なる企業リストは下記の通りです。
では、客観性・公平性を期すために、上から順番に5社ほど詳細に事業内容を確認しながら産業分類コード上の差異の理由を分析していきましょう。なお、企業や事業概要に関する情報ソースとして参照したのは、移転価格分析の実務と同様、主として、各社の2018年3月期の有価証券報告書(有報)、各企業のホームページに加え、補完的にGoogle・Yahoo・Wikipedia等の企業情報もあわせて確認しました。
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1. ATOM LIVIN TECH CO LTD
この企業の事業概要は「建築金物・家具金物を主体とした内装金物全般の企画・開発・販売」となっており、事業形態はファブレスと言われる「工場を持たない」仕組みを採用しています。ファブレス企業をOrbisでは5072(Hardware wholesale dealing in)として、Onesourceでは3426(Manu: Hardware, Not Elsewhere Classified)と分類しています。ファブレス企業については現時点では扱いが難しい(下記、筆者見解参照)ので、当該企業を卸販売業と分類するか製造業とするかに正しい正しくないの判断が法令上ある訳ではありません。ただ、両データベース間でファブレス企業に関する分類結果が異なることは事実のようです。
https://www.atomlt.com/ir/financial/pdf/63_frep.pdf
(筆者見解)ファブレス企業を、卸販売業と分類するか製造業とするかの扱いは移転価格専門家や調査官の間でも見解が分かれるところです。(Appleは製造業か卸売業か?と言われたらどちらの方がしっくり納得できますか?)移転価格分析上は、やはり事業実態のDelineation次第かと思われます。製造活動関連の機能・リスクを外部の製造業者に丸投げしているのか、グループ内に取り込んでいるのかさらに詳細な公開情報を入手して判断するするしかありません。余談ですが、個人的にはファブレスはファブレスで機能・リスクの持ち方が一般の製造業とも卸販売業とも異なることが想定されますので、別途産業分類コードを用意してカテゴリーを分けるべきではないかと考えています。移転価格分析上も、厳密には、製造業と卸販売業のいずれかに寄せるような分類作業を安易にするべきではないと考えられます。
2. DAIOHS CORPORATION
当該企業をOrbisでは、5149(Groceries and related products, not elsewhere classified wholesale dealing in)として、Onesourceでは8741(Management Services)として分類しています。有価証券報告書を見る限りでは、マネジメントサービス(トータルオフィスサービス)を主要事業としつつも、オフィスサプライ用品(ウォーターサーバ用の水ボトルやコーヒー豆等)の販売も手掛けているため、当該企業の事業内容としてはどちらもカバーしていると言えます。このようなときにいずれの事業をPrimaryとするのかについても両データベース間での考え方に相違点があるようです。また、有価証券報告書上の提出会社自体は純粋持株会社でもあるため、財務数値も連結データと単体データではカバーする事業範囲が大きく異なる点に留意しておく必要があります。
http://cdn.ullet.com/edinet/pdf/S100D8CV.pdf
3. DAITRON CO., LTD.
当該企業は、Orbisでは5065(Electronic parts and equipment, not elsewhere classified wholesale dealing in)、Onesourceでは3674 (Manu: Semiconductors & Related Devices)と分類されています。商品としては、いずれのデータベース上の分類も的を得ているのですが、有価証券報告書で見た場合、同社およびグループ会社(US・マレーシア子会社等)に生産設備があり、製造部門の従業員数も半数近くを占めていることから、グループとしてのメイン事業ドメインとしては、純粋なディストリビューターと言うよりも製造販売業者と見ることも出来そうです。しかし販売実績を基準とすれば、製造がメインの企業とも言いきれず、OECDガイドラインの言ういわゆる垂直統合が進んでいる企業として分類の難しい事業構造を有するタイプの会社にカテゴリーされるものと考えられます。
http://www.daitron.co.jp/ir/pdf/2017/7609_17yh4Q.pdf
4. DYNAM JAPAN HOLDINGS CO., LTD.
当該企業は、Orbisでは5092(Toys and hobby goods and supplies wholesale dealing in)、Onesourceでは7999(Amusement & Recreation, nec)と分類されています。グループ全体としては、パチンコホール運営事業とその運営サポートに関するサービスが主力(一部物販もある)、提出会社本体は持株会社で経営指導とあるので、サービス業との位置づけが有力です。販売業としての事業活動はないようですので卸販売業というよりも、サービス業としての扱いの方が実態に近いと言えます。
5. G-FACTORY CO.,LTD.
当該企業は、Orbisでは5136(Men’s and boy’s clothing and furnishings wholesale dealing in)、Onesourceでは8742(Management Consulting Services)となっています。ここも両データベース間で大きく産業分類の見解が分かれていますが、Orbisには当該企業のWebサイトが掲載されていないため、会社名と事業概要からHPを検索して見てみると、同会社名称のアパレル卸企業が出てきます。しかし、こちらの会社は中国企業で、その日本語サイトとなっており、本来とは別の会社の事業概要を混同して掲載したものと推測されます。http://www.g-factory.com.cn/jp/index.php?s=/cms/cate/1.html
日本企業の場合は、同名の経営コンサルを事業主体とする企業(http://g-fac.jp/)が出てきますので、Onesourceに掲載の事業概要は適切な情報と考えられます。
逆に、今回の検索&スクリーニング条件を使って、Onesourceでは検索されたもののOrbisでは検索されなかった企業のうち、US SICコードの上1桁から異なってた企業は9社ありました。その企業リストは下記の通りです。
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再び、客観性・公平性を期すために、上から順番に5社ほど詳細に事業内容を確認しながら産業分類コード上の差異の理由を分析していきましょう。なお、こちらも企業や事業概要に関する情報ソースとして参照したのは、移転価格分析の実務と同様、主として、各社の2018年3月期の有価証券報告書(有報)、各企業のホームページに加え、補完的にGoogle・Yahoo・Wikipedia等の企業情報もあわせて確認しました。
1. COSMO BIO COMPANY, LIMITED
当該企業は、Onesourceでは5122 (Whol: Drugs, Proprietaries & Sundries)、Orbisでは2899 (Chemicals and Chemical Preparations, Not Elsewhere Classified)と分類されています。コスモ・バイオ株式会社の事業概要に関する定性情報を集約してみると、「バイオ研究用試薬、研究用機器の商社である。」(Wiki)、「当社は、ライフサイエンスの幅広い研究用試薬、機器、臨床検査薬の仕入れ(一部自社製造)及び国内・海外販売を行っています。」(Google)、「ライフサイエンスに関する研究用試薬、機器、受託サービス及び臨床検査薬の仕入卸売販売を主たる業務としております。」(有報)、あたりの情報が並んでいます。確かに一部製造活動もあるようですが、最大の事業セグメントとしては圧倒的に卸販売になっており、従業員数も卸販売セグメントに大多数が集中しているので、産業分類上のPrimaryコードとしてはWholesalerの方が実態に近いと言えそうです。
https://www.cosmobio.co.jp/ir/pdf/yuk_20180326.pdf
2. DVx Inc.
当該企業は、Onesourceでは5047(Whol: Medical & Hospital Equipment)、Orbisでは3841(Surgical and Medical Instruments and Apparatus)と分類されています。ディーブイエックス株式会社の事業概要に関する定性情報を集約してみると、「ペースメーカ、ICD、アブレーションカテーテル等、循環器疾病分野の高度管理医療機器を中心に提案販売し、患者のQOL向上に貢献するサービスを実現」(Google)、「生産、受注及び販売の実績 a.生産実績/当社の事業は、商品の仕入販売であり、生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。」(有報)との情報が得られました。したがって、産業分類上のPrimaryコードとしてはWholesalerとの判断の方が適切と言えそうです。Orbisが当該企業を製造業として分類している理由は公開情報からは見出だせませんでした。
http://www.dvx.jp/ir/library3.html
3. JUTEC Holdings Corp
当該企業は、Onesourceでは5039 (Whol: Construction Materials, nec)、Orbisでは6719 (Offices of Holding Companies, Not Elsewhere Classified) と分類されています。 メインの事業としては住宅資材販売で生産設備や機能はない(有報)とされています。グループ全体としては卸販売業とみるのが妥当ですが、単体だけで見ると持株会社とみることも出来そうです。しかし、Orbis上で他のグループ企業をいくつか見ても、持株機能を持つ提出会社を持株会社の産業分類コードにカテゴリーしていないケースも散見されるため、取り扱いが一定していないとの問題点がありそうです。
https://www.jutec-hd.jp/ir/library/annual.php
4. Medius Holdings Co Ltd
当該企業は、Onesourceでは5047 (Whol: Medical & Hospital Equipment、Orbisでは7352(Medical Equipment Rental and Leasing)と分類されています。メディアスホールディングス株式会社の事業概要に関する定性情報を集約してみると、「医療機器の販売会社を事業会社に持つ持株会社です。」(Google)、また有報上も販売がメイン事業とされており、列記されている設備のリストにも生産設備は見受けられません。介護福祉機器セグメントではレンタル業となっていますが、人員数・売上高ともに全体に比して当該事業規模は僅少と言えます。したがって、リース関連サービス業と分類するよりは、Wholesalerとの判断の方が適切と言えそうです。
https://www.medius.co.jp/assets/2017/12/S100BE1Y.pdf
5. Nice Holdings, Inc.
当該企業は、Onesourceでは5031 (Whol: Lumber, Plywood & Millwork)、Orbisでは6531(Real Estate Agents and Managers) と分類されています。当該企業の主要事業は、木材製品・建材・住宅設備機器等の販売(建築建材)、木材市場の経営となっており、住宅事業では住宅建設や不動産仲介も行う(有報)とされています。従業員数でみると、建築資材事業と住宅事業の従業員数はほぼ同等規模ですが、販売実績で見ると建築資材事業の方が大半を占めています。したがって、産業分類上のPrimaryコードとしてはWholesalerとの判断の方がより適切と言えそうです。なお、住宅事業をPrimaryと判断する場合でも、不動産関連サービス業と分類するよりは、住宅建設業のコードが付与されるであるべきだと思われます。いずれにしても、この事例においても両データベース間で判断基準が異なっている点は分析上も留意すべきと考えられます。
https://www.suteki-nice.jp/files/2018/07/69th.pdf.pdf
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