移転価格分析向け二大企業データベース徹底比較 第2話(Orbis vs. Onesource)「製造業編」②

ベンチマーク分析/2大企業データベースを徹底比較
「製造業(Limited Risk Manufacturer)編」② Orbis vs Onesource
前回の記事「ベンチマーク分析/2大企業データベースを徹底比較: 「製造業(Limited Risk Distributors)編」①」の中で、OrbisとOnesource共通で選定された日本の比較対象候補会社が64社あると紹介しましたが、ではその64社以外の会社は、なぜいずれかの企業データベース上で選ばれたり選ばれなかったりしたのか?
移転価格分析に用いる上場企業レベルの情報になると、いずれかのデータベースにしか掲載されていない企業というのはほとんど見受けられません。
今回の事例では、ほぼ全ての候補企業が両データベースに何らかの形で掲載されているという事が確認できます(下記図表参照)。 なお、Orbisに含まれるがOnesourceには掲載されていない企業が1社、Onesourceには含まれるがOrbisには掲載されていない企業が1社、それぞれ存在していました。理由はいずれも上場予定または直後の会社であったようです。
本記事の検証内容に関する情報ソースですが、有価証券報告書については2017年度(平成29年度)分の内容に基づいて検証しています。企業ホームページについては、2018年8月1日時点の情報に基づいています。
64社以外の会社とは、前回記事に掲載したスクリーニング条件を適用した結果OrbisかOnesourceかのいずれか一方でしか検索されなかった候補企業ということになります。
まずは、Orbisでは検索されたもののOnesourceでは検索されなかった企業のうち、US SICコードの上1桁から異なる企業が15社ありました。(検索条件はUS SICコード(4桁)が281, 282, 286, 289から始める企業としているため、上2桁以降が異なるものは今回の精査対象から割愛しました。)これらの産業分類コードが著しく異なる企業リストは下記の通りです。
産業分類コードが著しく異なる企業リスト
Osiris | 候補企業数 | Onesource | 候補企業数 |
---|---|---|---|
AUSTRALIA | 7 | Australia | 8 |
BANGLADESH | 5 | Bangladesh | 2 |
BHUTAN | 1 | ||
CHINA | 127 | China | 45 |
FIJI | 1 | ||
HONG KONG | 2 | Hong Kong | 15 |
INDIA | 78 | India | 20 |
INDONESIA | 1 | Indonesia | 3 |
JAPAN | 83 | Japan | 92 |
KOREA, REP. OF | 10 | Korea, Republic of | 27 |
LAO PEOPLE'S DEMOCRATIC REPUBLIC | 1 | ||
MALAYSIA | 14 | Malaysia | 9 |
MARSHALL ISLANDS | 1 | ||
Mauritius | 1 | ||
MONGOLIA | 4 | ||
PAKISTAN | 2 | Pakistan | 3 |
PHILIPPINES | 2 | Philippines | 1 |
SINGAPORE | 3 | Singapore | 7 |
SRI LANKA | 4 | Sri Lanka | 6 |
TAIWAN | 25 | Taiwan | 43 |
THAILAND | 17 | Thailand | 27 |
VIETNAM | 20 | Vietnam | 25 |
総計 | 408 | 総計 | 334 |
では、客観性・公平性を期すために、上から順番に5社ほど詳細に事業内容を確認しながら産業分類コード上の差異の理由を分析していきましょう。なお、企業や事業概要に関する情報ソースとして参照したのは、移転価格分析の実務と同様、主として、各社の2018年3月期の有価証券報告書(有報)、各企業のホームページに加え、補完的にGoogle・Yahoo・Wikipedia等の企業情報もあわせて確認しました。
1. ASAHI YUKIZAI CORPORATION
当該企業をOrbisでは2821(Plastic materials, synthetic resins and nonvulcanizable elastomers)として、Onesourceでは3084(Manu: Plastics Pipe)と分類しています。当該企業の事業概要を確認すると、「管材システム事業、樹脂事業及び水処理・資源開発事業の3部門にわたって、製品の開発・製造・販売を行っております。」とあり、事業セグメント情報も掲載されており、「管材システム」が売上高、従業員数、設備投資の規模で大半を占めており、メイン事業としての位置づけになっている状況が伺えます。管材システムの詳細ですが、製品としては配管材料としてのバルプ、センサー、パイプ継手、流量制御機器等がメインになっています。OrbisもOsirisもプラスチックに関連するコードを設定しているものの、同社のメイン事業が樹脂そのものではなく配管用製品であることを考えると、移転価格分析上よりPrimary SICとして的に近いのはOnesourceのPlastics Pipeの方と考えられます。
http://cdn.ullet.com/edinet/pdf/S100DB3T.pdf
2. CHEMIPRO KASEI KAISHA, LTD.
当該企業をOrbisでは、2899「Chemicals and chemical preparations, not elsewhere specified manufacturing(化学薬品および化学品の調製、その他の製造)」として、Onesourceでは3861 「Manu: Photographic Equipment & Supplies(写真機材&用品の製造業)」として分類しています。有価証券報告書で事業概要を見る限りは、「化学品事業(紫外線吸収剤、写真薬中間体、製紙用薬剤などの製造販売)、ホーム産業事業(木材保存薬剤等の製造販売)となっています。事業セグメントとしては、「化学品事業」と「ホーム産業事業」の2つに大別されているようですが、売上、従業員規模、販売規模ともに「化学品事業」を主要な事業ドメインとみなすのが適切と考えられます。Primary US SICコードとしては、一見、Orbisの化学薬品および化学品の調製がより的に近いかとも思われるのですが、厳密に確認したところ、2899に例示がある写真用化学品はゼラチンを原料としたもの(フィルムや印画紙に使用される)を意図しているため(https://siccode.com/en/siccodes/2899/chemicals-and-chemical-preparations-not-elsewhere-classified)、同社の主要製品が該当するのは3861の製品例示に含まれるPhotographic chemicalsの方が近いのではないかとも考えられます(https://siccode.com/en/siccodes/3861/photographic-equipment-and-supplies-manufacturing)。この検証から導かれる留意点の一つとして、DB上のUS SICコードの定義だけを見てその会社の主要な産業分類を判断できるとは限らないということです。人間が持つ認識バイアスが比較対象企業の選定結果にもたらす影響には十分注意する必要があるのです。
http://www.chemipro.co.jp/pdf/20180626105260.17099500.pdf
3. COSMO BIO CO., LTD.
当該企業は、Orbisでは2899(Chemicals and chemical preparations, not elsewhere specified manufacturing)、Onesourceでは5122 (Whol: Drugs, Proprietaries & Sundries) と分類されています。有価証券報告書で事業概要を確認すると、「ライフサイエンスに関する研究用試薬、機器、受託サービス及び臨床検査薬の仕入卸売販売」を主たる業務としていることが記載されています。事業セグメントは単一事業であるとして記載されていないようですが、品目別のセグメント情報が記載されており、主要商品としては、仕入および販売規模面において、「研究用試薬」が適切であると考えられます。一方で、同社には仕入販売を中心とした「商社機能」と合わせて、自社開発した製品の製造という「メーカー機能」を兼ねており、実際に設備の状況を見ると製造拠点が掲載されています。但し、P11の6「研究開発活動」欄には、「当社グループは、ライフサイエンス研究用試薬の研究開発活動を行っておりますが、研究開発費は当社グループにおける費用の面で僅少である」とも書かれており、重要性の観点ではメーカー機能については無視できるレベルの活動と言えそうです。これらの情報を総合すると、OnesourceのWholesaler(5100番代)としてのSICコードの方が一般的には的に近いのですが、研究用試薬という意味合いでは、5122が代表する「ドラッグ・専売商品・生活用品」よりも、5169(Chemicals and Allied Products, not elsewhere classified)の方がさらにベターな分類ではないかと考えられます。また、仮に少しでも製造機能があれば製造業として分類するとの判断基準に立てば、Orbisの製造業(2800番代)としてのSICコードも可能性がない訳ではないのですが、こちらも2899(化学薬品および化学品の調製、その他の製造)とするよりも、より的に近い2835 – In Vitro and In Vivo Diagnostic Substancesの方が適切と思われます。
https://www.cosmobio.co.jp/ir/pdf/yuk_20180326.pdf
4. FUKUVI CHEMICAL INDUSTRY CO., LTD.
当該企業は、Orbisでは2899(Chemicals and chemical preparations, not elsewhere specified manufacturing)、Onesourceでは3299 (Manu: Nonmetallic Mineral Products, nec) と分類されています。同社ウェブサイト上で事業概要を確認すると、1.建築資材の製造・販売(住宅用内装材・外装装飾部材、集合住宅用床システムなど)、2.樹脂製産業資材の製造・販売、3.精密化工製品製造・販売となっています。有価証券報告書でセグメント情報を確認すると、「建築資材」と「産業資材」の2セグメントに分けられているようで、従業員数および売上規模で見ると、主要な事業セグメントは「建築資材」と言えそうです。建築資材セグメントの主要製品は「建築用外装材、内装材、床材等(有価証券報告書)」や「建築資材中心の合成樹脂製品(Yahoo Finance)」となっています。Primary US SICに関しては、製品構成やその素材も多様で必ずしも一つの主力製品から適切なコードを特定しにくい状況です。Orbisは2899-その他分類できない化学品に分類しており、なるほどという気もするのですが、前回記事でも触れた通り、2899を選ぶと他のどのSICにも区分されない程の余程の特殊化学品を扱っているような印象も受けてしまいます。Onesourceの3299 Nonmetallic Mineral Products, necも正確な検証が難しいものの、3253 Ceramic Wall and Floor Tileあたりも有力になってきます。このような取扱製品群が幅広い企業の場合はSecondary SICコードやNAICSコードも参照しながら、類似する製品群を取り扱う企業を広範に選定しなければならないという事になります。移転価格分析における比較対象企業スクリーニングの初期段階で、SICコードに依拠して検索対象を有効に絞り込むのが難しく、過度に手間を省くと分析結果が容易に歪められてしまう可能性のある事例の一つと言えそうです。
5. KIKUSUI CHEMICAL INDUSTRIES CO., LTD.
当該企業は、Orbisでは2899 (Chemicals and chemical preparations, not elsewhere specified manufacturing)、Onesourceでは3253 (Manu: Ceramic Wall & Floor Tile)となっています。ここも両データベース間で産業分類コードの設定が分かれていますが、当該企業のWebサイトに掲載されている事業内容を確認すると、「特殊機能性材料・建築仕上材の製造・販売、建築、土木材料、機械器具の製造販売」となっています。有価証券報告書で事業セグメントを確認すると、事業部門別セグメントに分かれており、「汎用塗料事業本部」「重太機事業本部」「全社(共通)」に分かれています。(余談ながら、地域別セグメントの売上高も掲載されており、大半が日本市場向け、海外は中国市場向け販売が大勢を占めている状況ですので、販売市場の比較可能性も検討できる数少ない企業です。)さて、「汎用塗料事業」の製品概要としては、「建築内外装仕上塗材、内外装仕上用シート状天然砕石装飾材など、幅広い領域」の建築材料となっています。Primary US SICコードの上記4. FUKUVI CHEMICAL INDUSTRY CO., LTD.とほぼ同様ですのでここでは割愛します。